キャラクターに感情移入させるコツが学べる「カニと修造理論」を紹介します。
カニと修造理論とは
カニと修造理論とは、ライムスター宇多丸氏のラジオ番組で三宅隆太監督が語ったシナリオの理論です。
キャラクターに感情移入させるためにはその人物がいい人かどうかではなく、その人物について知っているかどうかが重要である。というのが「カニと修造理論」です。
くわしく説明するためにカニと修造理論の名前の由来となった三宅監督の例え話を紹介します。
想像してみてください。松岡修造が日本海に浮かぶ船の上で『くいしん坊! 万才』のロケを行っていたとします。
松岡修造は漁師から差し出された獲れたてのカニの足をパキッと折り、「おいしそうですね」とカメラにプリプリの身を見せて笑顔でパクッとほおばります。
カニを食べる松岡修造を見て我々は「おいしそう」と思うはずです。カニの味がどうなのか修造のコメントが早く聞きたくなりますよね。
この状況で食べられているカニに感情移入する人はいないはずです。
しかし、このシーンの前にもうひとつシーンがあったとします。
想像してみてください。場所は海底、カニの家族が幸せそうに暮らしていたとします。ベビーベッドに寝ている赤ちゃんカニを見つめる、お父さんカニとお母さんカニ。
お母さんカニは「あなた、今日は結婚記念日なんだから早く帰ってきてね」と家族のために食料を探しに行くお父さんカニを見送ります。そのあと、お父さんカニの頭上に松岡修造の乗った漁船の影が・・・。
ここからは先ほどと同じシーンです。
松岡修造の前に新鮮なお父さんカニが差し出されます。我々は「やめてくれ! 家族が帰りを待っているんだ!」とお父さんカニに感情移入するはずです。
カニの足をパキッと折り、カメラに見せて「おいしそうですね」と笑顔でコメントする修造は我々の目には悪魔のような男に見えるでしょう。
1つのシーンを入れることで何が変わったのか?
それは、まったく知らなかった人物(カニ)が知っている人物(カニ)に変わったのです。
カニと修造理論から学べること
キャラクターに感情移入させるには、その人物について知っている必要がある。ということが「カニと修造理論」から学べます。
では、その人物について知っているとは具体的にどういうことなのか。それはその人物の動機や目的、その人物の置かれている状況を知っているということです。
その人物は何がしたいのか。その人物はなぜそれがしたいのか。現在の状況はどうなのか。といった情報です。
たとえ、その人物が善人でなくてもその人物の目的や動機、置かれている状況をうまく伝えておけば観ている側は感情移入してくれます。
その証拠に、物語の主人公は完全な善人ばかりではありません。『ルパン三世』や『オーシャンズ11』など、泥棒や強盗が主人公の作品はたくさんあります。
主人公と敵対するキャラクターに人気が出る作品も多いですよね。バットマン『ダークナイト』のジョーカーだったり『ドラゴンボール』のベジータだったり。主役をしのぐほどの人気です。
まとめ
今回はカニと修造理論について紹介しました。
三宅監督のその他のおもしろい話は、【「なんだ、猫か」ホラー映画のよくある恐怖演出に隠された意図とは?】でも紹介しています。
「なんだ、猫か」ホラー映画のよくある恐怖演出に隠された意図とは?