「小説や漫画を書いてみたいけど、どうやってストーリーを考えたらいいのかわからない」という人のために、誰でもそこそこ面白いシナリオが書ける物語の型【三幕構成】を紹介します。
三幕構成とは何なのかを初心者にもわかるように解説していきます。
この記事は『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術』を参考にしています。
もくじ
三幕構成とは
三幕構成とは、簡単にいうと起承転結のような物語の基本の型です。莫大な費用がかかるハリウッド映画の現場で磨きあげられた脚本術なので、観客の心をつかむための様々な工夫が凝らされています。
現在では映画の脚本にかぎらず小説、ドラマ、アニメ、漫画、ライトノベルなどのあらゆる物語に利用されています。
起承転結は物語を4つのパートにわけて考えますが、三幕構成では下の図のように3つのパートにわけて考えます。
- 【第一幕】主人公の置かれている状況や物語の舞台について説明する。
- 【第二幕】目的に向かって進んでいく主人公の苦悩や葛藤を描く。
- 【第三幕】主人公が問題を解決する。
昔話の『桃太郎』を例にすると、おじいさんとおばあさんに育てられた桃太郎が鬼退治に出掛けるまでが【第一幕】。犬と猿とキジを仲間にして鬼ヶ島に向かうのが【第二幕】。鬼を退治して家に帰るのが【第三幕】です。
このようにほとんどの物語は3つのパートにわけることができます。なぜなら、三幕構成はあらゆる物語の共通点から導き出された基本の型だからです。
それでは、第一幕、第二幕、第三幕の3つのパートでどんなことが語られるのか具体的にわかりやすく解説していきます。
第一幕:観客を物語に引き込む
第一幕は本格的にストーリーを進めるための準備をするパートです。【どんな主人公が、どんなことをする物語なのか】をわかりやすくしめして観客を物語に引き込みます。
第一幕は下の図のような流れで進行していきます。
設定説明(セットアップ)
時代はいつで、場所はどこで、主人公はどんな人物なのか、などの物語の設定が説明されるパートです。
昔話や童話を思い出してみてください。物語の冒頭でいついつの時代、どこどこの場所に〇〇がいた、〇〇はどんな人物で・・・といった情報が語られますよね。あれが設定説明(セットアップ)です。
説明っぽくなりすぎると観客がさめてしまうので、多くの場合は人物の行動や会話、描かれる情景などによって主人公の置かれている状況がしめされます。
きっかけ(インサイティング・インシデント)
観客が主人公の置かれている状況や設定を理解してきたころに、物語が動き出す【きっかけ】となるできごとが起こります。このできごとによって主人公の日常が変化していきます。
例をあげると、無名のボクサーにタイトルマッチの依頼が舞い込む、長年連れ添ったパートナーから急に別れを告げられる、不思議な力を手に入れる、空から少女が降ってくる、などが【きっかけ】となるできごとです。
きっかけとなるできごとは、主人公が求めているものを手に入れるチャンスをあたえたり、あるいは主人公の大切なものを奪ったりして感情を揺さぶり、主人公にアクションを起こさせようとします。
なので、シナリオを作るときは設定説明のパートで主人公が何を求めているのか、何を大切にしているのか、どんな悩みを抱えているのか、などの情報を観客に伝えておく必要があります。
重要な決断(プロットポイントⅠ)
きっかけとなるできごとによって状況が変わり、主人公は重要な決断をせまられます。そして、主人公が何らかのアクションを起こして物語が本格的に動き出します。このアクションが重要な決断(プロットポイントⅠ)です。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を例にすると、タイムマシンの実験中にテロリストに襲撃されるのが【きっかけ】となるできごとです。主人公はテロリストから逃げるためにタイムマシンに乗り込みます。これが【重要な決断】です。
その結果、主人公は過去(30年前)の世界にタイムスリップしてしまい、もとの時代に帰るという【目的】が生まれます。これで、この映画は【過去にタイムスリップした青年が、もとの時代に帰ろうとする物語】だということが観客に伝わります。
「どんな主人公が、どんなことをする物語なのか」がわかれば、観客は主人公が目的を達成できるかどうかが気になり、物語に引き込まれやすくなります。
第二幕:物語を盛り上げる
第二幕では目的に向かって進んでいく主人公の苦悩や葛藤が描かれます。ストーリーに起伏をつけて盛り上げるのが第二幕の役割です。
第二幕の前半で主人公を持ち上げ、第二幕の中間地点(ミッドポイント)で主人公をたたき落とし、最後に主人公を再び立ち上がらせる、というのが第二幕の流れです。
第二幕前半:主人公を持ち上げる
第一幕で「どんな主人公が、どんなことをする話」なのかをしめしました。そこから予想されるもの(観客が期待するもの)を第二幕の前半に見せます。
それは、苦労しつつも目的に向かって前進していく主人公の姿です。このパートで主人公がつまずくことはあっても、完全にあきらめることはありません。
主人公を持ち上げるパートの例
- 反発し合っていた2人がお互いを理解しはじめる。(恋愛ものやバディもの)
- 弱小チームが猛特訓の末、トーナメントを勝ち上がっていく。(スポーツもの)
- 手がかりを見つけて犯人を追いつめていく。(サスペンスやミステリー)
どん底へ落ちる【きっかけ】
第二幕の中間地点(ミッドポイント)で、目的に向かって順調に進んでいた主人公がどん底へ落ちる【きっかけ】となるできごとが起こります。主人公がいままでのツケを払わされるようなできごとです。
主人公の気づかないところで不満を抱えている人物がいたり、いつのまにか本来の目的とはちがう方向に進んでいたり。主人公が「まあ、いいか」や「仕方ない」で片づけてきたことが大きな問題となって降りかかってきます。
どん底へ落ちる【きっかけ】になるのは下の例のようなできごとです。
- 自分が隠してきた秘密がバレてパートナーと仲違いしてしまう。(恋愛ものやバディもの)
- トーナメントを勝ち進んできたのに決勝戦をまえにチームがバラバラになってしまう。(スポーツもの)
- 犯人を捕まえたはずなのに、同じ手口の新たな事件が発生してしまう。(サスペンスやミステリー)
このようなできごとによって主人公はどん底へたたき落とされます。状況は振り出しにもどったか、それ以上に悪化し、主人公は求めていたもの【目的】をあきらめようとします。
重要な決断(プロットポイントⅡ)
主人公は苦しみながらも自分の弱点と向き合い、どん底から抜け出すヒントを見つけます。ヒントは誰かの助言だったり、些細なできごとだったりします。
そして、「本当に大切なものは何なのか、自分はどう変化するべきなのか」を悟った主人公は【重要な決断】をします。それは主人公の成長がうかがえる決断です。
主人公は弱点を克服し、再び立ち上がります。そして、物語は第三幕へ。
第三幕:問題を解決する
第三幕では主人公の成長や変化が描かれます。「主人公は目的を達成できたのか、もしくはそれ以上のものを手に入れられたのか」、その答えがしめされます。
解決(クライマックス)
物語の中で得た経験を活かして主人公は問題に決着をつけます。物語の中でさまざまな経験をして成長した主人公の姿を観客に見せつけます。
エンディング
物語のはじまりと比べて主人公がどう変わったのかがしめされます。もしくは主人公のがんばりによって、まわりがどう変化したかがしめされます。
ほとんどの作品は、物語のはじまりとダブるようなシーンをエンディングに持ってきます。はじまりの場所にもどったり、昔の自分と重なるような人物を見つけたり、誰かに最初と同じセリフをいわせたり。そうすれば主人公の変化を簡単にしめすことができるからです。
三幕構成の解説:まとめ
以上が三幕構成の簡単な解説です。好きな作品や、お手本にしたい作品がどんな構造になっているのか三幕構成にあてはめて分析してみるとさらに理解が深まります。
プロット(物語の設計図)を書く際も、主人公の目的や動機を意識しながら【きっかけ】や【重要な選択】などの項目を考えていけば最後まで書き上げることができると思います。