今回は、マジックの種明かし本として有名な『妖術の開示』に関する逸話を紹介します。
- 中世ファンタジーものや、異世界転生ものを書きたい人
- 魔女狩りやマジック(奇術)を題材にした作品を書きたい人
- 弱者を救うために権力に立ち向かう主人公が書きたい人
『妖術の開示』に隠された逸話
現在でもマジックの種明かしや解説をする本が多く出版されていますが、こういった本は昔から存在していました。
その中でも有名なのがレジナルド・スコットの書いた『妖術の開示』です。
ただ、『妖術の開示』は娯楽のために作られた現在の種明かし本とは少しちがった目的を持って書かれていました。
『妖術の開示は』なぜ書かれたのか
中世(5世紀から15世紀)はマジックにとって不遇の時代でした。マジックは数千年の歴史を持っていますが、この千年間は技術の進化が止まっています。
なぜなら宗教が強い力を持っていた中世ヨーロッパでは、マジックをあやつる奇術師(マジシャン)たちは悪魔の力を借りた危険な存在だと思われていたからです。
奇術師にかぎらず中世ヨーロッパでは悪魔と関係があると思われる人物は宗教裁判にかけられ、無理やり犯してもいない罪を自白させられていました。
そして、1486年にハインリヒ・クラーメルが『魔女への鉄槌』を書いたことにより、宗教裁判(魔女狩り)はさらに悪化していきます。
その後、このような事態に苦しめられる無実の人たちを救いたいと願うひとりの男(レジナルド・スコット)が現れます。レジナルドは悪魔のしわざだと思われていること(マジックなど)には種があり、人間の手で実現できるということを証明しようとして1冊の本を書きます。
こうして生まれたのが『妖術の開示』です。『妖術の開示』は娯楽のための種明かし本ではなく、人々を助けることを目的としたマジックの種明かし本だったのです。
1584年、レジナルドは『妖術の開示』を出版して宗教に支配された時代や人々の心に一石を投じました。
しかし、悪魔の存在を否定した『妖術の開示』は権力者たちの怒りを買って禁書に指定され、レジナルドの死後そのほとんどが焼き払われてしまいます。
その後、時代の変化とともに中世的な価値観が薄れていき、魔女狩りもなくなっていきます。その影にはレジナルド・スコットというひとりの男が関わっていたのです。
これがマジックの種明かし本『妖術の開示』に隠された逸話です。