「ストーリーが思いつかない」「シナリオを面白くする方法がわからない」「プロットの書き方がわからない」といった悩みを抱える人や、スランプに陥っている人は多いと思います。
そんな人たちをまとめて救済してくれるのが『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』です。
脚本家や小説家、漫画家などの作家志望の人はもちろんのこと、ハリウッド映画のストーリーはどういう構造をしているのか興味がある人も楽しめる内容になっています。
それでは、『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』がどのようにおすすめなのかを具体的に紹介していきます。
もくじ
『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』とは
『SAVE THE CAT(セイブ・ザ・キャット)の法則 本当に売れる脚本術』とは、映画の脚本を書きたい人にとってはバイブルのような本であり、漫画家や小説家などの物語を考える人にも役立つシナリオ作りの指南書です。
ハリウッド式の脚本術をあつかった本の中でも特にわかりやすく、内容も充実しています。著者のブレイク・スナイダーがフランクなノリでシナリオ作りのノウハウを教えてくれます。
本の雰囲気を伝えるために冒頭のブレイク・スナイダーの言葉を引用します。
巷にある脚本術の本は、あまりにも小難しい! しかも面白みもなく、退屈だ。映画というものをものすご~~~く高尚なものとして崇拝しすぎている――たかが映画じゃないか! 実際に脚本家や映画会社の連中が使っているような、簡単な言葉で書かれた脚本術の本があってもいいんじゃないか?
『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』
このように教科書のような堅苦しさがなく、初心者でもとっつきやすいのが本書の特徴です。
『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』の内容
肝心の中身はどうかというと、シナリオ作りに関するチャプターが1~8まであり、各チャプターのあとに【まとめ】と【練習問題】がついています。
各チャプターの内容は大体こんな感じです。
- 「どんな映画なの?」と聞かれたときに内容を簡潔に伝えて相手に興味を持ってもらえるようにする方法。(ログラインについて)
- 10種類のストーリーのタイプについて。
- 主人公はどういう人物であればいいのか。(ログラインから物語を膨らませる方法)
- ストーリーの構造について、筆者の作ったテンプレートをつかって説明してくれる。
- キャラクターの感情に注目したシーンの組み立て方。
- キャラの性格や状況の説明をスムーズにするためのテクニックやその他のテクニック。
- できあがった脚本をチェックする方法や改善する方法。
- 脚本の売り込み方など。(ハリウッドでプロになりたい人向け)
ログラインやストーリーのジャンル分け、物語のテンプレートあたりはストーリー作りで苦戦している人にとても役立つ内容です。
なので、チャプター1と3の【ログライン】と、チャプター2の【ストーリーのジャンル分け】と、チャプター4の【ブレイクスナイダー・ビートシート】についてもう少しくわしく紹介します。
ログラインについて
チャプター1と3で言及されているログラインについて紹介します。
ログラインとは、どんな内容のストーリーなのかを1行か2行の文章に短くまとめたものです。たいていの場合「どんな人物がどんなことをする(どんな目に遭う)」という形の簡潔な文章であらわされます。
具体的な例をあげると映画『ダイ・ハード』のログラインは以下のようになります。
警察官が別居中の妻に会いに来るが、妻の勤める会社のビルがテロリストに乗っ取られる。
『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』
『ダイ・ハード』のように大ヒットした作品たちは、この1行に観客たちの興味を引く要素が詰め込まれているとブレイク・スナイダーは語っています。
それは何かというと【皮肉】や【イメージの広がり】です。
『ダイ・ハード』でいうと警察がプライベートでとんでもない事件に遭遇する、というのが皮肉です。イメージの広がりとは映画の雰囲気や面白いことが起こりそうな予感がログラインから伝わってくるという意味です。
たしかに、面白くて有名な作品は誰かに紹介する際、どんな話なのかを説明しやすいですよね。
それでは、ログラインはどのように役立つのか?
ブレイク・スナイダーはこう語っています。
ログラインとはストーリーの基本ルールであり、ストーリーのDNAである。(中略)もしアイデアの特徴がしっかり凝縮された完璧なログラインができれば、それに従っていくだけで脚本は正しい方向へ導かれていく。
『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』
つまり、ログラインはシナリオを書いていくための道しるべになるということです。
そんなログラインの作り方や、ログラインを面白くする方法などがチャプター1と3で紹介されています。物語をシンプルにとらえられるようになるので、複雑に考えすぎて行き詰まってしまう人におすすめの内容です。
ログラインについては、こちらの【ログラインの作り方|1行の物語からストーリーを考える方法】でもくわしく紹介しています。
ログラインの作り方|1行の物語からストーリーを考える方法ブレイク・スナイダー流 ストーリーのジャンル分け
つぎはチャプター2に登場するブレイク・スナイダー流のストーリーのジャンル分けについて紹介します。
すべての映画は10種類のストーリーに分類できると、著者のブレイク・スナイダーは語っています。
アクション、サスペンス、ファンタジーなどのジャンル分けではなく、ストーリーの本質で分けるのがブレイク・スナイダー流です。
ストーリーの本質にもとづく10のジャンル
- 家のなかのモンスター
- 金の羊毛
- 魔法のランプ
- 難題に直面した平凡な奴
- 人生の節目
- バディとの友情
- なぜやったのか?
- バカの勝利
- 組織のなかで
- スーパーヒーロー
これだけだと、どのように分類されているのかピンとこないと思うので、ひとつを取り上げてボクなりに解釈したものを紹介します。
6の【バディとの友情】がわかりやすいので、それをつかって説明します。
ジャンル【バディとの友情】はどういったストーリーの流れかというと・・・
【バディとの友情】の流れ
- お互いを嫌っている二人が主役。
- 何か理由があってコンビを組んで協力することになる。
- 反発し合うが次第に信頼関係が生まれてくる。
- それでもプライドなどがジャマしてケンカ別れ。
- しかし、お互いに相手が必要だと気づいて仲直り。
- お互いにとって最高のバディ(相棒)になる。
といった感じです。刑事ものなどによくあるパターンですよね。
でも、こういう風に書かれると他にもどこかで見たことのあるパターンだと思いませんか?
ラブコメ映画や少女漫画などによくあるパターンに似ていますよね。
ラブコメによくあるパターン
- 仲の悪い男女が主人公。
- 文化祭などの行事で協力しなければいけなくなる。
- 仕方なく協力していくうちに親しくなっていく。
- 互いに惹かれ合ってきたときにトラブル(隠していた秘密が発覚するなど)が起こってケンカ別れ。
- でも、相手が必要だと気づいて最後にくっつく。
- お互いにとって最高のパートナーになる。
実はラブコメなどの恋愛ものの一部はバディものと同じジャンル【バディとの友情】に分類されます。
なんと、【バディもの】の相手の性別を変えるだけで【恋愛もの】に変わってしまうのです。
このように物語の本質的な部分(ストーリーの構造)で分類しているのがブレイク・スナイダー流のジャンル分けです。
【バディとの友情】にふくまれるその他の作品
- 『ET』
- 『レインマン』
- 『48時間』
- 『10日間で男を上手にフル方法』など。
この方法で分類すると『スター・ウォーズ』と『オーシャンズ11』が同じジャンルの【金の羊毛】になります。
【金の羊毛】は「何かを求めて旅に出た主人公が、求めていたものとは別のもの(自分自身)を手に入れる」というパターンの物語です。
他には『ダイ・ハード』と『アルマゲドン』は「どこにでもいそうな平凡な人物が、とんでもない状況に巻きこまれる」というパターンの物語【難題に直面した平凡な奴】になります。
チャプター2では10種類のストーリーが、それぞれどんな特徴を持っているのか、どんな作品がそのジャンルに属しているのかがくわしく紹介されています。
自分が作ろうとしている物語がどのタイプのストーリーなのかを知っておけば、共通する作品の参考すべきポイントが具体的にわかるようになります。
ブレイク・スナイダー・ビートシートについて
チャプター4で登場するブレイク・スナイダー・ビート・シート(BS2)を紹介します。
ブレイク・スナイダー・ビート・シートとは、ハリウッドの脚本の基礎になっているシド・フィールドの三幕構成をもとに作られた物語のテンプレートです。
シド・フィールドの脚本術を参考に【三幕構成】をわかりやすく解説!三幕構成よりもテンプレートの項目が多いので、ストーリーを作り慣れていない初心者でも次に何をすればいいのか迷わない設計になっています。
どういうものかというと、こちらです。
ブレイク・スナイダー・ビート・シート(BS2)
1.オープニング・イメージ(1)
2.テーマの提示(5)
3.セットアップ(1~10)
4.きっかけ(12)
5.悩みのとき(12~25)
6.第一ターニング・ポイント(25)
7.サブプロット(30)
8.お楽しみ(30~55)
9.ミッド・ポイント(55)
10.迫り来る悪い奴ら(55~75)
11.すべてを失って(75)
12.心の暗闇(75~85)
13.第二ターニング・ポイント
14.フィナーレ(85~110)
15.ファイナル・イメージ(110)SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術
()内の数字は脚本の何ページ目にそれが書かれているか、110分の映画だと何分くらいにそれが起こるのかというのをあらわした数字です。
1~15はそれぞれどんな意味や内容なのかくわしく説明すると膨大な量になってしまうで、ざっくり説明します。
- 【オープニング・イメージ】:物語のイメージや雰囲気を伝えるシーン。
- 【テーマの提示】:作品のテーマを提示する。(たいていは登場人物の誰かがテーマに関することを口にする)
- 【セットアップ】:登場人物や舞台などの物語の設定を説明する。
- 【きっかけ】:物語が動き出すきっかけになるできごとが起こる。
- 【悩みのとき】:きっかけとなるできごとによって主人公が悩む。
- 【第一ターニング・ポイント】:主人公が自らの意志で行動して物語が本格的に動き出す。
- 【サブプロット】:メインから少し離れたサブストーリー(キャラクターの恋愛について語られる場合が多い)
- 【お楽しみ】:作品の売りになる部分(観客が予告などから期待していたもの)を見せる場面。
- 【ミッド・ポイント】:物語の流れが変わるポイント。
- 【迫り来る悪い奴ら】:すべて上手くいっていたように見えた主人公に困難が襲いかかる。
- 【すべてを失って】:主人公が絶不調になる。
- 【心の暗闇】:夜明け(解決作をみつける)まえの暗いシーン。
- 【第二ターニング・ポイント】:徹底的に打ちのめされた主人公が最悪の状況から抜け出す解決作を見つける。
- 【フィナーレ】:物語の中で教訓を学んで成長した主人公が勝利する。
- 【ファイナル・イメージ】:オープニング・イメージと対になるシーン。オープニングと比べて主人公などがどのように変わったのかを見せる場面。
という内容です。ストーリーを動かす要因のほとんどは主人公の感情の変化にあるということがわかりますね。
ブレイク・スナイダーいわく、ほとんどのハリウッド映画は15個の要素からできたこのような構造になっています。なので、このビートシートに当てはめるように考えていくと物語のプロットが簡単につくれてしまいます。
なので、物語の構造を勉強したい人は自分の好きな作品をビートシートで分析してみることをおすすめします。
ビートシートをつかったストーリーの分析の例は【ビートシートをつかって『キック・アス』のストーリーを分析してみた】で紹介しているので参考にしてみてください。
『キックアス』のストーリーをビートシートで分析してみた自分で分析するのがめんどうだという人には『SAVE THE CATの法則』の続編『10のストーリータイプから学ぶ脚本術』がおすすめです。
ビートシートをつかって映画のストーリーを分析した例が50本も収録されています。
『10のストーリータイプから学ぶ脚本術』は物語のテンプレ辞典まとめ
本書を参考にログラインからしっかり作っていけば物語のプロットは完成させられると思います。
むずかしい言葉をつかわずフランクにシナリオの作り方を教えてくれる『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』は、物語が書けなくて困っている作家志望たちの救世主になるでしょう。
最後に、この本のタイトルにある『SAVE THE CATの法則』とはどういう意味なのかを紹介します。